今週初め、埼玉県の教頭先生が、飲酒運転の上、相手を死亡させ、さらにひきにげをし、逮捕されるというニュースを目にし、驚愕しました。
管理職の飲酒運転だけでも全国的なニュースになるのに、さらに致死、ひき逃げです。
2008年の福岡市における市役所職員によるひき逃げ事件を思い出します。おさない3人の子供の命が犠牲になりました。
あれからちょうど10年です。
この事件、を服務・倫理的な観点からではなく、今後、この教頭先生の身におこる影響の点から改めて調べてみました。
このことから学び、改めて身を律する気持ちを高めるためです。
この教頭先生が負わなければならないこと
結論から述べます。
- 20年以上の実刑判決の可能性が高いです。
- 任命権者の規則にもよりますが、飲酒運転というだけで懲戒免職の可能性が高いです。
- 酒酔い運転だった場合90点、酒気帯びだった場合、その量により、合計80点もしくは68点の原点です。さらに10年間は、欠格となります。
- 退職金がなくなる上に、高額の賠償金を遺族に支払う必要があります。
これらは、確実におこることと思われます。
処罰や処分の根拠
その根拠について述べます。
まず、飲酒ひき逃げ死亡事故を起こした場合にどのような罪が適用されるのかについて述べます。
刑事罰について
こちらによると、次の罪に問われます。
- 酒気帯び運転、酒酔い運転
- 負傷者の救護、危険防止の措置違反
- 事故報告の義務等違反
- 現場に留まる義務違反
- 過失運転致死傷罪(自動車運転過失致死傷罪)
- 危険運転致死傷罪
- 殺人罪
驚くほど多くの罪に問われるのです。
この中で「殺人罪」が異彩を放っています。ひき逃げの上死亡させたとあっては、殺人と同等の扱いになるというのは納得せざるを得ないですね。
しかし、殺人罪が適用されることはめったになく、無免許の場合に適用されるのだそうです。
報道によると、教頭は、自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死)と道交法違反(ひき逃げ)で逮捕されています。
飲酒の事実が確認されれば、危険運転致死罪に問われることになります。
それだけで20年以下の懲役となります。
さらにひき逃げ等の併合罪により、可能性としては20年を超えてしまうことがあります。
また、ひき逃げによる死亡事故は、示談の可能性も低く、実刑判決が出る可能性が高いとのことです。
行政罰について
道交法における違反点数は最高90点の減点となります。
飲酒運転は酒酔い運転と酒気帯び運転に別れますが、酒酔い運転では、35点。酒気帯び運転では、その量により25点、もしくは13点の減点です。
救護義務違反(ひき逃げ)では、35点の減点です。
危険運転致死傷の20点がくわわります。
これらを合わせると、道路交通法違反(飲酒)+救護義務違反(=ひき逃げ。道路交通法違反)+危険運転致死の併合で・・・・
酒気帯び轢き逃げ死亡事故(0.25mg以上) 80点(25酒気帯び+35ひき逃げ+20死亡)10年
酒気帯び轢き逃げ死亡事故(0.15~0.25mg) 68点(13酒気帯び+35ひき逃げ+20死亡)9年
相当な厳しさです。
さらに、免許失効後、最低9年間は、欠格となります。
民事責任について
遺族に対して賠償金を支払う必要があります。
任意保険に入っていればそこで補えますが、もし入っていない場合、自賠責では3000万円までしか保証されません。
それを超えた分は一生使ってかえさなければならないということになります。
任命権者による懲戒処分について
自治体にもよりますが、飲酒運転は多くの自治体では免職です。免職か停職としている自治体や、酒酔い運転と酒気帯び運転とで処分内容に差をもたせている自治体もあります。
しかし、取消訴訟なども行われており、緩和の動きも出ています。
埼玉県では、H29年の調査で、「酒酔い運転または酒気帯び運転をした職員は免職、または停職」となっています。
さいたま市の「さいたま市職員の懲戒処分の指針」では、「飲酒運転をした職員は免職とする」と明記されています。
今回の事件による、当該教頭先生の今後の影響
今後、上のような責任を負うことにより、次のようなことがまっています。
- 社会的制裁を受け、家族もつらい思いをする
- すでに顔写真などを調査して発表するサイトもできています。
- 54歳で20年の実刑判決を受けた場合75歳頃の出所となる。
- 出所が早まったとしても退職金がないので、生活資金がない。衣食住をどうするのかという問題がでてくる。
- 本人がこれまで積み上げてきたことが無に帰してしまいます。
- 賠償が終わっていなければ、その責任がある。
- 家族はすでに離れているかもしれない
- 親類縁者との連絡がつくかどうか。
- 子どもによる扶養が期待できるか
- 再出発できる年齢ではない。介護をうけなければならない状況になっている可能性もある。
まとめ〜ひき逃げにならないように
飲酒運転前日の午後10時15分に宴会が解散となり、当日午前2時15分に事故を起こすまでの4時間に、一体何があったのでしょうか。
みんなが電車で買える中、同席していた校長先生には「バスで帰る」といって別れたそうです。
バスで帰ると言ってそのままどこかにおいていた車で数件の店を移動したのか
校長先生に伝えたとおり、一度バスで家に帰ってから、その後コンビニに行くなどの用事で車を運転してしまったのか。
この4時間におこったできごとがなんであったにせよ、自分の意志で車を運転してしまったという事実は厳然としてあります。
警察の調べにより、「気づかなかった」と言っているとのことですが、車のランプのカバーが取れていることや、車体にへこみがあることなどから、「気づいたはず」という理由で認められないことは容易に想像できます。
このことから私達が学ぶべきことは、飲酒運転の是非については当然のこととして、「ひきにげ」にならない注意を十分にはらう、ということです。
本当に気づかない場合もあるのですが、異音や「感じ」に敏感になり、おかしいと思ったら車を停めて確認する勇気を持つことです。
今回の事故の場合、教頭は「ものに少し当たった程度だと思った」と言っています。
しかし、このときに、車を降りて確認しなかったことが明暗の分かれ目でした。
すくなくとも、「ひき逃げ」という最悪の事態にはならなかったのです。
ひき逃げとは、
「運転を止めなかったこと(現場に留まる義務違反)」
「負傷者を直ちに救護しなかったこと(負傷者の救護、危険防止の措置違反)」
「警察に連絡しなかったこと(事故報告の義務等違反)」です。
すくなくとも、それらの罪には問われないで済んだのです。
逆に言えば、飲酒死亡事故でなくても、ひき逃げをすると、このすくなくともこの3つの違反を問われるということになります。
私達は、この事例から、飲酒運転や当然のこととして、「ひき逃げを絶対にしない。歩行者、弱者を守る」という運転意識をさらに強めていきたいものだと思います。