総合教育技術2019-8号に、「令和時代の学校環境整備」という特集がありました。
その中の一つのコーナーが目に留まりました。
「老朽化対策をチャンスとしてジャンプ思考で学校施設の未来を考える」という記事
「学校施設の在り方に関する調査研究協力者会議」の座長、東洋大学名誉教授の長澤悟氏の寄稿です。
この3月、施設整備指針の改定が行われたのですが、その方向性として写真に掲げたような7つの視点が書かれていました。
氏は、老朽化をチャンスと見て、早急に長寿命化改良、高機能化で行う方ができるチャンスと見ています。
これは確かにそうです。
「改善して」と行っても、予算が取れないので放って置かれることが多いのですが、「子供が事故にあいそう!」とか「老朽化で使えない」なような緊急性があれば、なんとかせざるをえないからです。
施設整備指針という名前からは、いかにもお役所が現場のことをあまり知らずに机上の空論で考えたもののような感じをうけました。
しかし、実際には、行政関係者だけでなく、建築家、教育方法の研究者、私学運営者、教職員、地域防災・安全の専門家の方々が、お幅広い視点から意見を述べて作られているのでした。
中でも視点1の「新学習指導要領への対応」の視点にはかんがえさせられました。
というのも、指導要領が、今回学び方、教え方まで言及している以上、当然その内容を達成するためには、当然学校の施設、建築そのものにも見直しが求められるという見方については心の底から賛同したからです。
「主体的・対話的で深い学び」を実現させる授業をささるなら、そのための自由度の高い教育空間とICTを日常的に利用できるような環境がたしかに必要です。
私たちは、与えられた箱の中でなんとかやる、ということばかり考えてきているので、なかなか箱自体をよりアップグレードしてくれ、という感覚にはなりにくいです。
一方で、このようなことを考えてくれているのかと感心しました。
視点としてインクルーシブ教育、多国籍、多民族などの多様性に対応したデザインの必要性がありましたが、それはもはや当然でしょう。
その中に「教職員の働く場としての機能向上」という視点がいれてあるのに大変心が踊りました。
教職員のリフレッシュやコミュニケーションの場は、今の日本では大変必要なこととされています。
不祥事や悲惨なできごとがおこるたびに、風通しの良い職場づくりとか、思いを話せる仲間がいなかったのか、など人間関係の大切さが叫ばれます。
しかし、それを生み出すための施設環境の構築を語っているものをみることはあまりなかったと思います。
だから、私たちは、自分たちで職員室を明るい雰囲気にしようとあれこれ工夫を積み重ねてきました。
教職員の精神的なゆとりが、今後の教育にとって大切なこととして指針の4つめに挙げられたことの意義はとても大きいと思います。
他にも、地域との連携・協働の視点、学校施設の機能向上の視点、変化に対応できる施設整備の視点と全部で7つの視点が述べられています。
今回、このような指針の改定が行われることによって、初めて施設整備の充実を、これまでの概念から大きく飛び越えなければならないことに気づきました。
自分たち自身が、教室という箱に閉じ込められているのです。
教育のアップグレードのためには施設のアップグレードを。
そのためには、教職員や、教育行政に携わる人間の意識のアップグレードを。
今回、そのような示唆をしてくれているものと思います。